住宅ローン「フラット35」の取り扱いを行っているアルヒが、事前審査システムの回答時間を従来の最短当日から最短1分に短縮したことが、8月30日にプレスリリースされました。
モデルの中村アンさんを起用したCMで興味を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
参考 業界初、「家探し前クイック事前審査」が最短1分で審査可能に(アルヒ株式会社)
最短1分で結果が回答されるには
- 平日9:00~20:30
- 土日・祝日9:00~15:30
の時間帯に審査申込をすることが条件です。この時間帯以外の申し込みは翌日回答です。
最短1分の事前審査とはどのようなものなのか、そして手軽さゆえに申し込みするメリットはあるのか検証してみます。
「家探し前クイック事前審査」とは
「簡易事前審査」って何?
「家探し前クイック事前審査」は2017年12月にサービスを開始した「ARUHI フラット35」の簡易事前審査のことです。
「簡易事前審査」って何?と思われるかもしれません。先ほどのプレスリリースから分かることは、
購入予定の物件が決まっていない場合でも、物件決定前に免許証の写真アップロードと7項目の入力だけで、「ARUHI フラット35」の借入可能額を把握できる事前審査
となっており、収入から希望額が借りられるのかを判断してくれるだけの審査となっているようです。
事前審査の入力
まず審査には「ARUHI ID会員」への登録が必要。登録はメールアドレスだけあれば可能です。
審査画面は至ってシンプル。
運転免許証の表裏を撮影した画像をアップロード、記載されている住所・氏名・生年月日、免許証番号はそれにより自動読み取り。それ以外の7項目の入力をするだけで終了します。
入力必要な7項目は
- 氏名のフリガナ
- 電話番号
- 勤務先名
- 勤務先電話番号
- 前年度年収
- 借入希望額
- 今回の住宅取得以外の借入の月々返済額
となっています。
借入希望金額
借入希望金額は生年月日と年収を入力すると計算された値が自動的に表示されます。
年収 | 借入希望金額 |
100万円 | 831万円 |
200万円 | 1,662万円 |
300万円 | 2,493万円 |
400万円 | 3,878万円 |
500万円 | 4,847万円 |
「こんなに借りられるのか!」と喜ばないでくださいね。
2018年9月のフラット35の金利で、先ほどの借入希望額の年収に占める借入れの年間合計返済額の割合(=総返済負担率)がどのくらいになるかシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション条件
フラット35、借入期間35年、金利1.39%(35年間変動なし)
年収 | 借入金額 | 総返済負担率 |
100万円 | 831万円 | 30% |
200万円 | 1,662万円 | 30% |
300万円 | 2,493万円 | 30% |
400万円 | 3,878万円 | 35% |
500万円 | 4,847万円 | 35% |
どこかで見たことがある比率だと思いませんか。
フラット35の収入に関する借り入れ条件は
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
基準 | 30% | 35% |
と決められています。この条件の上限が表示されているだけです。
実際にこの総返済負担率で審査が通るか分かりませんが、上限まで借りた場合、何かあった場合、生活は簡単に破綻するレベルの返済額となっています。
総返済負担率は、以前に作成・公開したシミュレーションを使用しています。詳しくは「住宅ローンの繰り上げ返済シミュレーションをエクセルで作成してみました」をご覧ください。
家探し前クイック事前審査を受けるメリットは?
限られた項目の簡易審査
フラット35の事前審査で必要な情報には
本人の属性…借入人の氏名、住所、生年月日、電話番号、勤務先(住所、電話番号、職業、業種、就業年月)、前年・前前年収入、現住宅種類・面積
借入に関する事項…借入年月、借入金額、返済年数、返済方法(元利均等・元金均等)、つなぎ融資の有無、ボーナス払い併用の有無、住宅ローン以外の借り入れ有無・金額、フラット35Sの有無
敷地…敷地住所、敷地面積、敷地の権利関係
土地・建物…建物床面積、工事請負業者、販売業者、建築予定年月、土地取得年月、店舗併用住宅有無、担保提供者、取得予定建物種類、取得理由
などの項目があります。先ほどの7項目と比較すれば、提供する情報量の差は歴然。
逆にこの「家探し前クイック事前審査」では入力する項目が限られていることから、このシステムで審査されるのは
- 年収に占める借入れの年間合計返済額の割合(=総返済負担率)は適正か
- 個人信用情報に問題はないか
の2点だけではないかと思います。
フラット35では借入対象となる建物に条件があります。
①住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅
②住宅の床面積が、次の基準に適合する
- 住宅一戸建て住宅、連続建て住宅および重ね建て住宅の場…70㎡以上
- 共同建て住宅(マンションなど)の場合…30㎡以上
③住宅の建設費(土地取得費に対する借入れを希望する場合は、その費用を含む。)または購入価額が1億円以下(消費税を含む。)の住宅
購入する住宅あるいは契約するハウスメーカー・工務店が決まらないうちに、フラット35の審査を行うこと自体、あまり意味があるとは思えません。
利用するメリットは限定的
先ほどの審査される2項目について、問題がないか把握することができる点についてはメリットになります。
- 年収に占める借入れの年間合計返済額の割合(=総返済負担率)は適正か
- 個人信用情報に問題はないか
注意事項にもありますが、
家探し前クイック事前審査の結果をもって、ご融資をお約束するものではありません。
この審査で融資OKというわけではありません。
どのくらいの金額のローンが組めるのかを事前に把握したうえで、物件探しが可能になるのがメリットの一つです。
もう一つのメリットが個人信用情報に問題がないかを知ることができること。借入額に問題がないのにこの審査に通らない場合、個人信用情報に延滞履歴が残っている可能性が非常に高くなります。
審査項目が限られている故、普通の事前審査では分かりにくい「どこに問題があって審査が通らなかったのか」かハッキリ分かるのも敢えてメリットにしてもいいかもしれません。
最後に
簡易事前審査の審査スピードの短縮、当日から業界初の最短1分になったこと自体にはあまりメリットは感じられないかもしれません。普通の買い物と違い、住宅購入、あるいは建築で一刻を争う場面が出現する可能性は非常に低いからです。
しかし今回の取り組みを含めて、アルヒはモーゲージバンクの中でも商品開発を含めて様々な取り組みに積極的な印象を受けます。
以前「フラット35(保証型)ってご存知でしたか?条件次第ではフラット35(買取型)に比べて低金利に」で取り上げた「ARUHIスーパーフラット」もその一つ。
今後の新しい商品開発にも期待したいところです。
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