太陽光発電設備の不具合に早めに気が付くために必要なデータの分析方法、その中で気が付いた発電し過ぎの2月の原因を探る

太陽光発電
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2月は天候に恵まれ太陽光発電も順調に発電量を伸ばしてくれました。我が家では昨年9月より発電を開始しましたが、月ベースではこれまでの最高を記録しました。発電量については東電から検針表が届いてから別記事にてご紹介させて頂きます。

今回は2月の発電効率があまりにもよかったことにいささか疑問を抱き気象庁に問合せをしてみた顛末をご紹介させて頂きます。

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太陽光発電のデータを記録・分析する理由は?

一言で言ってしまえば、太陽光の発電システムに何らかのトラブルが発生したことによる発電量の低下に対して早めに対処できればと思ったからです。

財団法人 太陽光発電検査協会のHPによれば、太陽光発電システムの発電低下に繋がる原因としては次のものが挙げられています。

  1. ホットスポットの発熱でのモジュール損傷によるもの
  2. ホットスポットによる発熱でのクラスタ内通電不良によるもの
  3. 配線不良による断線状態
  4. バイパスダイオードの不良によるもの
  5. モジュール内のハンダ付け不良によるもの
  6. 周囲の樹木・電柱・建築物の陰の影響によるもの
  7. 接続コネクタの抜けによる断線状態
  8. パワーコンディショナの故障・不良によるもの ※
  9. 漏電(PID)などに起因する発電不良によるもの

(出典:太陽光発電検査協会)

太陽光パネルを目視で確認することが出来れば、パネルが今どのような状態なのかはすぐに判ります。我が家ではソーラーカーポートに搭載されたパネルについては二階のバルコニーから確認ができるのですが、屋根の上に設置されているパネルは確認するすべがありません。

また先ほどの不具合原因の中でもホットスポットの発熱でのモジュール損傷によるものなどは、いきなり発電量が0にはならないでしょうから、すぐには気が付きにくいのかと思われます。

しかしパネルの一部でも発電していなかったり、発電量が落ちたりすることが長期に渡って継続してしまえば、そのロスは計り知れません。さらに発電払いで借入した額も少なくはありませんので、返済が終わる約10年後まではしっかり発電してもらわなければ、私が困ってしまいます^^;

そこで発電量に影響する要因である日照時間や日射量を用いて、現在の発電が順調に行われているのかを知りたいと思い、我が家では発電開始に合わせてデータの記録を始めました。

日照時間・全天日射量・傾斜面日射量と実際発電量の関係

発電が順調に行われているのか、何を調べると精度の高い検証ができるのか、これをまず最初に見ていきたいと思います。

日照時間と発電量の関係

まずは皆様よくご存じの日照時間から。確かに日照時間が長ければ発電量は多くなることは想像に難くないところです。また日照時間から太陽光発電の年間発電量を求める方法が紹介されているケースを見かけることがありますが、この方法はあまりお勧めはできません。

その理由は日照時間の定義にあります。日照時間として計測される光の強さは直達日射量が120W/㎡以上であった時間のことを指します。ピンときませんが、120W/㎡の明るさとはおおよそ直射光によって物体の影が分かるくらいの明るさになります。

同じ日照時間でも、その光の強さは異なりますので、発電量との相関は低くなります。昨年9月から2月までの前橋の日照時間と我が家の発電量をグラフにしてみました。

日照時間が長くなれば発電量も多くなるのは分かりますが、相関係数は0.68と弱い相関関係となっているため、データにはかなりのバラつきがあるのが一目で分かります。

同じ日照時間0でも、発電量は実に20kw/hもの差が生じています。薄曇りでも辺りが暗いぐらいの時でも120W/㎡以下は日照時間は0ですから、このような差が生じるのは当然の結果といえます。

一例をご紹介します。今年の1/27と2/7の比較です。両日とも日照時間は9.9時間と全く同じでしたが、発電量は76.2kW/hと91.9kW/hとかなりの開きがあります。同じ晴れの天気でも上空の薄雲や大気中の水蒸気量や粒子の量によっても発電量は変わってきます。

この様なことから発電量を検証するにあたって日照時間を用いるとかなり精度が悪く、発電設備の不具合などが発生していても、気が付きにくいのではないかと思われます。

全天日射量と発電量の関係

全天日射量は地面に対して水平に設置された日射計で測定された、単位面積当り,単位時間に受ける日射エネルギー量を表します。

日照時間0でも全天日射量は0.46~1.19kWh/㎡を記録していることから、日照時間元にするよりもはるかに制度の高い分析が行えそうです。

全天日射量は水平面日射量と水平面散乱日射量の合計からなっています。

(全天日射量)=(水平面直達日射量)+(水平面散乱日射量)

水平面直達日射量とは太陽の光球の範囲のみからの日射量で、水平面散乱日射量は太陽の光球以外の範囲からの日射量(大気分子や雲粒で散乱された光)です。

前橋の全天日射量と我が家の発電量の関係をグラフにしたのがこちらになります。

先ほどの日照時間と比較したグラフと比べると明らかに強い相関関係がみられます(相関係数0.92)。

この全天日射量の数値は気象庁が国内約50地点で毎時間観測し、データを公表していますので、この数値を利用して発電量との関係を検証するのは、有効かと思われます。

なおこの発表されている全天日射量の単位はMJ/㎡となっていますので、公表されている観測値を3.6で除するとkWh/㎡に変換ができます。

傾斜面日射量と発電量の関係

全天日射量は水平面で観測した値です。これに対して太陽光パネルは1.5寸や3寸など傾きを持って設置されている事やパネルの方位が一定ではないことから、パネルが受ける日射量は全天日射量とは異なる数値となります。

パネルに日射計を取り付けられれば一番正確な日射量を計測できるのでしょうが、所詮無理な話です。そこでパネルの傾斜角や方位、緯度などを考慮し、パネルが受ける日射量、すなわち傾斜面日射量を全天日射量から計算により求め、より正確な日射量で発電量との比較を行ってみます。

このブログで使用している傾斜面日射量は傾斜面日射量推定プログラム(Erbsモデル)を元に算出しています。詳しい計算方法を知りたい方はこちらのサイトが参考になるかと思います。

太陽光発電:斜面日射量の推定プログラム(Erbsモデル)(JavaScript版)

傾斜面日射量と発電量の関係をグラフにしてみました。

近似値線を引いてみると分りますが、傾斜面日射量と発電量にはさらに強い相関関係が認められます(相関係数0.96)。さらに傾斜面日射量が4kwh/㎡以上の部分をご覧いただければ分りますが、データはほぼ一直線上に並んでいます。

従ってこの傾斜面日射量が4kwh/㎡以上のケースで、極端に発電量が少ない日が連続した場合には、発電設備の不具合を疑ってみるといいかと思います。

1kwh/㎡~4kwh/㎡の間については、気象台と我が家の距離による雲のかかり具合が異なるケースが多いため、データには若干のバラつきが生じるケースが多くなります。

発電量がおかしいことから気象庁に問合せしたこと

間もなく発電開始から半年が過ぎますが、先月2月の中旬に発電量が少々おかしいのではないかと思う日が発生しました。

まずは我が家のこれまでの発電量と傾斜面日射量との月別の関係をご覧ください。

データの数は160日分、降雪でパネルが雪に覆われた日とパワーコンディショナーの点検により発電が停止した時間帯がある日は除外してあります。発電量は我が家のパネル搭載量20.09kWhでの発電量となっている点にご注意ください。

昨年10月と今年の2月は日射量が多かったことから、〇で囲んだ部分、日射量および発電量が多い右上のエリアに10、2月のデータの数が多いことが分ります。

また2月は10月に比べて日射量が少ないのですが、2月は温度上昇が10月と比べて少ないことから発電効率がよくなり、全天日射量が少ないのにもかかわらず、10月と同等の発電量があることが分ります。

損失(発電ロス)が0との比較

傾斜面日射量を使い実際の発電量を予想するには、次の計算式で求めることができます。

予想発電量=傾斜面日射量×パネルの容量×(1-パネル表面の温度上昇によるロス)×(パワコンなどのシステム変換によるロス)×(1-パネルの汚れなどその他原因によるロス)

一条工務店のパネルの公称最大出力は我が家の搭載量では20.09kWになります。すなわちロスが0だったと仮定した場合の最大発電量は傾斜面日射量が1kW/㎡の日で20.09kW/h、5kW/㎡では100.45kW/hとなります。

このロスが0の最大発電量はY=20.09Xの直線となりますので、さきほどのグラフにこの直線を引いてみます。

今年の2月は直線より上、ほぼ直線上、限りなく直線状に近い発電量の日が集中していることが分ります。

この直線より上にあるデータは予想される最大発電量を超えて発電があったことを表しています。また下にある場合でも直線に近いデータは発電ロスが少なかったことを意味しています。

今回データを記録していて疑問に感じた点は、2月の発電量が多すぎる日が多発していたという点なのです。

発電量が多い理由を推測すると

発電量が想定より多い理由としては考えられるのは

①気象庁の発表している全天日射量の測定値がおかしいので、日射量をもとにしたロス0の発電量が少なくなってしまっている。

②一条工務店のパネルは公称最大出力205kwとなっているが、最大出力の上限値が100%を上回る性能を有しており、そのため発電量が多い。

③我が家の上空だけ日射量が多いので、発電量が多くなっている。

の3つくらいかと思われます。②の可能性は低いと思います(通常の公称最大出力の定義に基づいている数値と仮定して)。③も数日くらいなら誤差の範囲内と思われるのですが、可能性としては低いかと思います。

消去法で考えれば①の全天日射量の測定値がおかしいのではないかと疑いを持ちました。それにはさらに訳があります。

前橋地方気象台の全天日射計は観測地点の変更のため、1/28に移設されました。異常値が発生するようになった時期もこれに重なっているのです。

検証のため期間中の傾斜面日射量が4kwh/㎡以上の日のロスがどれくらい発生したのかをグラフにしてみました。

グラフの赤丸で囲んだ部分が1/28の移設後です。発電のロスがそれまでとちがい異なり明らかに小さくなっているのがよく分かります。

気象庁への問い合わせ

そこで全天日射量の計測値について気象庁に問い合わせをしてみたところ、回答を頂けました。それによれば

観測機器については、常に良好に動作するよう点検、整備を行うとともに、観測結果についても、その品質を確認しており、ご指摘の問題はないと考えております。

観測機器、観測結果とも問題はないとのことでした。全天日射量の測定値に誤りがないとすれば、この損失の減少をどのように説明したらいいのか分かりません。継続してデータを分析することで、一時的なものなのか、これが継続するのか見極める必要がありそうです。

3月もこの様な状態が続く場合、再度問合せしてみようかと思っています。(すでに3月もそれらしい兆候があるのですが…)。

余談ですが回答と一緒に添付して頂いた資料の一部です(おそらくこのために作成して頂いたのだと思います)。回答自体は満足いく結果にはならなかったのですが、随分と丁寧な対応をしてくださるのには感心してしましました。

最後に

今回のケースでは、想定される発電量が多いので特に困ることはありません。しかしこれが逆の場合などは、原因を早く見つけられればそれだけ損失を減らすことが出来ます。

発電を始めたばかりの場合などは一体どれくらいの発電量があれば妥当なのかを把握することがなかなか難しいと思います。傾斜面日射量までは無理でも、全天日射量と発電量の関係を把握しておくと、後々役に立つ場合もケースもあります。

コメント

  1. ヤン より:

    傾斜面日射量と発電量の相関が非常に良いですね(^_^)参考になります。

    太陽光発電はセル温度差での発電量差が大きい為に2月の発電効率が良いかと思いましたが、ロス計算見ると、気象庁の測定箇所変更の影響が大きそうですね(^_^;)

    ちょっと考えていた事もあり、我が家も発電始まったらデータ収集してみます(゚∀゚)ただ近くに全日射量測定箇所が無いんですけどね〜

    • 閑古鳥 より:

      ヤンさんこんばんは^^
      1~2月の発電効率がもっとも良いだろうと予想はしていたのですが、これでは効率が良すぎです。
      日射計の場所はそれほど移動していないので、ますます謎は深まるばかりです。
      全天日射量測定地点は各都道府県に一カ所程度なので、あまり距離があると相関は悪くなりそうですね。こればかりはどうしようもないですね。