家族の不幸を招かないために知ってほしい住宅ローンの怖さ

住宅ローン
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閑古鳥です。

家づくりにおいては実に様々な意思決定を短期間で行っていかなければなりません。住宅ローンもそんな中の一つ。

マイホームの打ち合わせは間取りを決めたり、オプションを選んだりと夢が膨らむ楽しい時間の連続かと思いますが、住宅ローンについてはいかがでしょうか?

住宅ローンを借りるのは大半の方が初めての経験、わからないことが多く不安になるのも当然のこと。そんな時営業担当に丸投げしてしまうのは非常に楽なことです。でも本当にそれでいいのですか?

確かに営業担当は色々とアドバイスをしてくれるでしょう、しかしメインの仕事は家を売ることです。ある程度の知識は身に着けているかと思いますが、すべての営業がローンについて精通しているとは思えません。

極端な話ですが、売りやすいように毎月の支払額が少なくなる変動金利のシミュレーションを提示して「家賃並みの返済額」でマイホームが手に入りますとセールスするケースだってあります。

家づくりでは多少の失敗、後悔する点などは必ずと言っていいほど出てきます。しかし住宅ローンの失敗についてはこれから先、長い期間にわたって家計に重大な影響を与えます。場合によっては破綻や家庭崩壊するケースだって出てきます。

今回は過去にあった結構住宅ローン商品の実態をご紹介し、少しでも住宅ローンの怖さを知っていただければと思います。

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ゆとり返済って知っていますか?

現役の銀行員でも若い世代の方々はご存じない住宅ローンかもしれません。住宅金融公庫(今の住宅金融支援機構)が取り扱いしていた住宅ローンの商品名です。

1993年に導入されましたが、わずか7年後の2000年に廃止されてしまいました。なぜわずか7年でなくなってしまったのか、それにはわけがあります。

政府系金融機関であった住宅金融公庫のローン商品としては、あまりにお粗末では済まされない、ある意味欠陥商品だったからです。

導入経緯

このゆとり返済は政府の景気対策として住宅取得促進を目的に導入されました。

収入が少ない若年層や低所得者層でもでも当初5年間の返済額を減らすことで、融資が受けられるようにしたものです。ご丁寧に将来の賃金上昇分まで加味して審査していたのには、まさにビックリ仰天です。

導入された当時はバブル崩壊から4年が経過していましたが、ゆとり返済が終了する5年後には景気が回復し、賃金も上昇しているという今から考えると非常に甘い見通しのもとに融資はおこなわれました。

ゆとり返済の仕組み

具体的にどんな住宅ローンだったのか、その仕組みを見てみると

1~5年目  借入額を75年の元利均等返済で借入したものとして返済額を計算
6~10年目  5年経過時の借入金残高を借入期間の元利均等返済で計算
11年目以降 金利が大幅に上昇、残り期間で残債を返済

75年の元利均等返済は2年後に50年に改められましたが、それでも50年です。借入額が減るわけではありませんから、後々の返済がきつくなるのは明々白々です。

具体的な数字を入れて計算してみるとどうなるでしょうか。

借入額3,000万円、金利4%(当初10年2%)、借入期間35年で借入した場合での毎月の返済額はどのくらいになるでしょうか。

1~5年目  毎月元利金返済額 64,384円
6~10年目  毎月元利金返済額 96,375円
11年目以降 毎月元利金返済額 137,628円

初めの5年間の月々の返済額は75年で計算されているのでかなり少な目です。しかし返済額の大半は支払利息に消えていきます。

この5年間で381万円のローン返済を行いますが、元金部分はたった90万円しか減らず、残り291万円は利息の支払いとなっています。

さらに驚くことはその返済額の変化です。6年目に1.5倍、11年目からは当初の2.1倍に跳ね上がっています。

ゆとり返済の末路

当然のことながら導入から5年後の1998年、ちょうど返済額が増加した時期に住宅金融公庫は返済期間の延長や元金の返済を猶予し利息のみの支払いに抑えるなどの返済条件の緩和を実施しています。

このゆとり返済による住宅ローンの破綻者が増加したためです。このゆとり返済の債権総額のの実に17%が返済困難に陥ってしまったというデータもあります。

住宅ローンの返済が破綻し任意売却、競売、自己破産となってしまったケースは検索すれば山ほど出てきます。共通して言えるのは借入した当時はまさか自分が破綻するとは想像もしていなかったということです。

通常ローンが破綻する原因となるのは収入の減少、病気、離婚などが多いのですが、ことゆとり返済に関しては商品性の欠陥が破綻の一因であった気がします。

なぜ借りたのか

かなり高い確率で破綻するのが目に見えていたゆとり返済なのですが、当時はローンの内容もよく理解していない方も多く、当初5年間の安い返済額に釣られて本来住宅取得は難しいと思われる方々まで、この制度に飛びついたのが実態でした。

いまでこそネットで住宅ローンに関する情報は簡単に収集できますが、当時はそんな手段はありませんでした。銀行の住宅ローンを比較するには、実際に銀行まで出向いて行ってパンフレットを貰うしかありませんでした。

そんな時代でしたからローンと言えば建築業者に勧められるまま契約していた方が多かった印象があります。

翻って情報の多くなった現在のローン利用者はどう変化したでしょうか?民間の住宅ローンを利用者を対象に行われた調査の結果があります。

参考 2015年民間住宅ローン利用者の実態調査(PDF)

この中で「住宅ローンの商品特性や金利リスクへの理解度」を尋ねたところ、
返済中に金利変動があり得る「固定期間選択型」及び「変動型」を利用した方の住宅ローンの商品特性や金利リスクへの理解度は、「理解しているか不安」又は「よく(全く)理解していない」との回答が合わせて約4割から5割であった。

という結果が出ています。

これだけ情報を得る機会がたくさんある現代ですら、約半数の方々が住宅ローンについての理解が不足するまま借入しているのが実態なのです。

最後に

業者にとってはローンが実行されてさえしまえば売買代金は確実に回収できます。そのあと住宅ローンを顧客が返済出来ようが出来まいがそんなことは関係ありません。金銭消費貸借契約証書に実印を押したのは(押すのは)ご自分なのですから、ローンが破綻しようが生活が苦しくなろうがすべて自己責任なのです。

打ち合わせでは実現したいことが多くなり、どうしても予算を上回ることが多くなってしまします。しかし理想を実現するために身の丈に合わない金額のローンを借りるのは非常に危険です。銀行はあなたの希望額を貸してくれるかもしれませんが、「借りられる金額」=「返せる金額」ではないことに注意しなければいけません。

打ち合わせの忙しい最中ですがローンについては家族でじっくり話し合うことが、今後のためにも重要です。

家を守ろうとして家族が崩壊しては元も子もありません。家を作る最大の目的は家族が幸せに暮らしていくためなのですから。

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